マンモグラフィによる被曝の危険性は?乳がんになる?疑問について解説

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2024.09.20

乳がんは早期発見をして、適切な治療を受けることで完治を目指せるがんです。乳がんについて気になっている人の中には、マンモグラフィを検討している人もいるのではないでしょうか。マンモグラフィは被ばくのリスクもあるので、安全に受けられるのか気になりますよね。

本記事では、マンモグラフィによる被ばくのリスクについて詳しく解説します。マンモグラフィの危険性について気になっている人は参考にしてみてください。

マンモグラフィー

1.そもそもマンモグラフィとは?

マンモグラフィとは乳房専用のレントゲン検査のことです。検査中は乳房をプラスチックの板ではさみ、さまざまな方法から乳房を片方ずつ順に撮影します。

マンモグラフィで、なぜ乳房を圧迫させるのか気になっている人もいるでしょう。乳がんは乳腺から発生しますが、女性の乳房内には乳腺が張り巡っています。マンモグラフィでは、乳腺もがん細胞も白く映し出されるため、病変は見つけにくい特徴があります。

検査時に乳房を圧迫し、薄く伸ばした状態で撮影することで、乳房が均一に広がりムラのない画像を撮影することができます。乳腺の重なりがなくなり、がんを見つけやすくできるのです。

また、検査時に乳房を圧迫すると、放射線の被ばく量を抑えられます。乳房の厚さを1㎝にすれば、放射線量を半分にできます。

2.マンモグラフィの危険性は?被ばくすると乳がんになる?

乳がんの早期発見のために、マンモグラフィを検討している人の中には、放射線の被ばくについて気になっている人も多くいます。ここでは、被ばくとがん発生のメカニズムについて説明します。

放射線の被ばくによりがんが発生するメカニズム 放射線とは、放射性物質から放出される電磁波や粒子のことで、放射線を浴びることを「被ばく」といいます。放射線を受けると細胞の遺伝子が傷つくため、がんの発生リスクを高めます。これは放射線が細胞のDNAを切断するためです。

とはいえ、細胞のDNAはダメージを修復する力を持っており、放射線によりDNAが傷ついても大きな問題はありません。しかし、傷ついたDNAがうまく修復できないと、誤った遺伝子情報を持つ細胞が次々と増えていきます。この異常な細胞ががん細胞であり、がんを発生する要因となります。

放射線の被ばくで発がんリスクがあるのは、年間100ミリシーベルトです。DNAが傷つく原因には、放射線による被ばく以外にも、加齢・飲酒・タバコ・感染・化学物質・紫外線・食習慣があります。これらもまたがんの要因となるものです。

がんの発症リスクを高める生活習慣が、どの程度の被ばくに相当するかみていきましょう。

  • 継続した喫煙・・・1000~2000ミリシーベルトの被ばくに相当
  • 運動不足・・・200~500ミリシーベルトに相当
  • 野菜の摂取不足・・・100~200ミリシーベルトに相当

少量の放射線を浴びても、必ずがんになるとは限りません。しかし、がん予防のためには、被ばくの機会を減らすことが重要です(※1)。

2-1.マンモグラフィの被ばくで受ける放射線量

マンモグラフィを受けるうえで、放射線量について気になっている人もいるでしょう。1回のマンモグラフィで浴びる放射線量は0.05ミリシーベルトほどです。

あまり知られてませんが、日常生活の中でも放射線を浴びています。宇宙や大地など自然界からも放射線が発せられているためです。例えば、飛行機に乗るなど、高度の高い場所では身体に受ける線量が増えます。

日常生活から受ける放射線量は年間2.4ミリシーベルトであるのに対して、1回のマンモグラフィによって浴びる放射線量は、50分の1程度しかありません(※3)。これは飛行機で東京からニューヨークを片道で行った際の放射線量に相当します。

日本ではアメリカのガイドラインを元にしており、乳腺と脂肪が半分ずつで、厚さが42㎜の乳房を撮影したときに、1撮影あたりの線量が3mGy以下になるように定められています。国内のマンモグラフィ装置は、ガイドラインもさらに少ない2.4mGy以下で撮影が行われています(※2)。

乳房の厚みや乳腺の密度によって、マンモグラフィで受ける放射線量は異なりますが、マンモグラフィによる被ばくは、健康への影響がほとんどないことが分かります。2年に1回など継続的に検査を受けても、将来、がんや白血病になる可能性は限りなく少ないといえます。

3.乳がん検診でマンモグラフィが行われている理由

マンモグラフィは乳がん検診で行われる検査のひとつです。マンモグラフィにより被ばくするのに、乳がん検診で行われることを不思議に思われる人もいるかもしれません。乳がん検診をはじめとするがん検診には、ベネフィットと不利益があります。

乳がん検診では、医師が乳房を観察したり触れたりする視触診も行われます。しかし、ごく初期の乳がんのように小さい病変は視触診で発見するのは難しいものです。乳がん検診でマンモグラフィも行うことで、視触診では分かりにくい小さな病変を発見することを目指しています。

マンモグラフィによる被ばくは、乳がん検診の不利益に当たります。一方、マンモグラフィで乳がんの早期発見をして、死亡率を下げられるというベネフィットがあります。検査のベネフィットが不利益を上回ることから、乳がん検診ではマンモグラフィが行われています。

4.マンモグラフィは受けない方がいい?

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日本では、40歳以上の女性を対象に、2年に1回乳がん検診が勧められています。マンモグラフィによる被ばくが気になる人の中には、検査を受けない方が良いのか迷っている人もいるかもしれません。前述したように、2年に1回など適切なタイミングで受ければ、マンモグラフィによる被ばくによって健康が脅かされることはありません。

ただ、国内の乳がんの5〜10%は遺伝性乳がんが原因とされています(※4)。遺伝性乳がんのリスクがある人は、25歳以上から6か月おきの検査が勧められています。

後で詳しく述べますが、頻回にマンモグラフィを受けることに対し、抵抗がある人もいるでしょう。20代30代の若い女性に対しては、マンモグラフィは必ずしも乳がんの早期発見に優れているというわけではありません。

遺伝性乳がんなどで、乳がんの発症リスクが高く、医療機関での定期的なフォローが必要な人は、マンモグラフィ以外の検査を組み合わせることもできます。

5.被ばく以外のマンモグラフィのデメリット

検査時に放射線を浴びる以外にも、マンモグラフィにはデメリットがいくつかあります。 検査時に乳房を見られたり触れられることがある 多くの女性にとって、自分の乳房を他人に見られたり触られたりするのは、恥ずかしさや苦痛をともなうものです。マンモグラフィは、上半身の衣類と下着をすべて脱いだ状態で行われます。検査時には検査着を着用しますが、撮影の際に上半身を露出しなければなりません。

また乳房を撮影する際に、1枚の画像化により多くの乳腺を写す必要があります。そのため検査技師が、乳房を前方に引き出したり、薄く伸ばしたりすることもあるでしょう。検査のためとはいえ、乳房を見られたり触られたりするのに抵抗がある人もいます。マンモグラフィに対する嫌悪感から、検査を受けるのを敬遠する人も多くいらっしゃいます。

5-1.検査時に痛みがある

マンモグラフィは、乳腺の重なりを少なくするため、検査時に乳房を圧迫します。痛みの感じ方は個人差がありますが、乳腺が硬い人や乳房の皮膚が伸びにくい人は、マンモグラフィで痛みを感じやすくなります。

また生理前など乳房が張りやすい時期は、マンモグラフィの痛みを強く感じやすくなります。マンモグラフィを受けるときは、生理後など乳房の張りがない時期に受けるのがおすすめです。生理直後であれば、乳腺も柔らかく、乳房が十分に広がった画像が撮れやすくなります。

マンモグラフィの検査中に、検査台の高さが合っていなかったり、乳房の皮膚が無理に引っ張られることで痛みを感じることもあります。検査中に強い痛みを感じるときは、遠慮なく検査技師に伝えましょう(※2)。

5-2.偽陰性や偽陽性がある

その他の検査と同じように、マンモグラフィを受けても誤った結果が出ることがあります。偽陰性と偽陽性の意味は次のとおりです。

偽陰性:病気であるのに検査結果が陰性になること 偽陽性:病気であるのに検査結果が陽性になること

マンモグラフィでは、しこりや石灰化病変が白く写ります。しかし、乳房のしこりの9割は良性疾患によるものです。画像でしこりが見つかっても、必ずしも乳がんであるとは限りません。

そのため、マンモグラフィでしこりや石灰化が見つかったときは、乳がんかどうかを調べる必要があります。乳がんの精密検査では、病変がある箇所に針を刺して細胞や組織を採取する検査が行われます。

5-3.高密度乳腺の人はがんを見つけにくい

乳腺の密度が高いことを高密度乳腺といいます。マンモグラフィでは乳腺組織もがんによる病変も白く写ります。そのため高密度乳腺の人は、検査を受けても病変が見つかりにくい特徴があります。

とくに日本人は欧米人よりも、乳腺の密度が高く、若い人ほどその傾向が強くなります。そのため、20代30代の若い女性が乳がんを早期発見するには、マンモグラフィよりも超音波検査(エコー)やその他の検査の方が適しています。

5-4.検査を受けられない人がいる

マンモグラフィはすべての女性が受けられる検査ではありません。次に当てはまる人は検査を受けられません。

  • 妊娠または授乳中の女性
  • ペースメーカーやシャント等を入れた女性
  • 豊胸手術を受けた女性

マンモグラフィは放射線の被ばくがあるため、妊娠中は受けられません。おなかの赤ちゃんへの影響を避けるためです。また妊娠中や授乳中は乳腺が発達しているため、病変が分かりにくく、マンモグラフィは適していません。

また、マンモグラフィでは乳房を圧迫するため、ペースメーカーや豊胸バッグを破損する可能性があります。医療器具等を体に挿入している人は、念のために医師に相談してみましょう。

6.マンモグラフィの被ばくが気になる人へー無痛MRI乳がん検診とは

乳がん検診でも行われているマンモグラフィですが、被ばくやその他のデメリットが気になる人は、無痛MRI乳がん検診「ドゥイブス・サーチ」があります。ドゥイブス・サーチではMRI検査により乳がんの早期発見を目指します。

無痛乳がん検診②

6-1.無痛MRI検査「ドゥイブス・サーチ」の特徴

ドゥイブス・サーチでは、乳がんの発見を目的にMRI検査を行います。MRI検査はがんの広がりを確認するために、乳がんの手術前や治療効果を評価するために行われています。検査では強力な磁石でできた筒状の検査機器に入り、電磁波の作用で体の断面図を画像化します。

MRI検査は、マンモグラフィのように放射線の被ばくがないため、妊婦さんや授乳中の女性も検査を受けられます。また着衣のまま検査を受けられ、検査中に痛みを感じることはありません。医療スタッフに乳房を直接見られたり触れられたりすることがないため、乳がんの検査に対して苦手意識を持っている人も受けやすい特徴があります。

6-2.無痛MRI乳がん検診のデメリット

女性にとってメリットの多いドゥイブス・サーチですが、デメリットもいくつかあります。MRI検査は検査中に強い磁場ができるため、ワンワンとした工事音のような強い音が鳴り響きます。

また、検査をしている間は筒形の検査機の内側で安静にする必要があります。閉所恐怖症など狭い空間に居続けることが難しい人は、検査中にパニックを感じることがあるかもしれません。しかし、これらのMRI検査のデメリットは、耳栓をしたり、検査機器の形状を選ぶことで解決できます。

マンモグラフィに不安や苦手意識を感じている人は、無痛MRI乳がん検診を検討してみるのもよいでしょう。

無痛MRI乳がん検診について詳しく知りたい人はこちら

7.マンモグラフィの被ばくに関するQ&A

マンモグラフィの被ばくに関して、疑問や不安がある人もいるかもしれません。マンモグラフィの被ばくに関してよくみられる質問についてお答えします。

7-1.乳がん検診でマンモグラフィが行われるのはなぜですか?

乳がん検診でマンモグラフィが行われるのは、検査により乳がんの早期発見をし、死亡率を下げられるためです。

乳がん検診では、マンモグラフィのほかに医師による視触診が行われます。ただ、初期の乳がんは、視触診だけでは病変を見逃してしまうリスクがあります。マンモグラフィを行うことで、乳がんの小さい病変を発見しやすくなります。

7-2.マンモグラフィを受けるうえでの注意点は?

マンモグラフィには、不利益もいくつかあります。

放射線の被ばくがある 乳がんを見落としてしまうことがある 誤った判定により侵襲をともなう精密検査を受けることがある

どの検査にもいえることですが、ベネフィットもあれば不利益もあります。マンモグラフィを受けるときは、両者を十分に理解したうえで検査を受けましょう。

7-3.マンモグラフィは毎年受けた方がよいですか?

マンモグラフィを受ける頻度は、乳がんのリスクや年代によっても異なります。乳がんの罹患者数は30代後半から増えてくるため、40代になったら乳がん検診等で2年に1回はマンモグラフィを受けることが推奨されています。

一方、遺伝性乳がんのリスクがある人は、一般の人よりも乳がん発症リスクが高いため、25歳以上から医療機関で定期受診を受ける必要があります。医療機関の定期受診では、年1回のマンモグラフィがありますが、MRI検査など被ばくリスクのない検査を検討することができます。

マンモグラフィの検査回数を少なくしたい人は、MRI検査による乳がん検診を受けてみるのもよいでしょう。

8.まとめ

マンモグラフィは乳房専用のレントゲン検査であり、検査により放射線の被ばくがあります。一方で、1回のマンモグラフィで浴びる放射線量は、1年で浴びる平均的な放射線量と比較するとかなり少ないものです。そのため、乳がん検診など2年に1回ペースでマンモグラフィを受けても、健康に悪影響を及ぼす可能性はほとんどありません。

一方で、放射線による被ばくは発がんのリスクを高める要因でもあります。マンモグラフィによる被ばくが気になる人は、他の検査を組み合わせてみるのもよいでしょう。放射線の被ばくがない検査には、無痛MRI乳がん検診「ドゥイブス・サーチ」があるので検討してみてください。

参考文献

※1:放射線とがん

※2:公益社団法人 日本放射線技術学会/マンモグラフィ

※3:東邦大学医療センター 大橋病院 放射線部/マンモグラフィQ&A

※4:滋賀医科大学医学部付属病院/家族性腫瘍関連遺伝子検査(乳がん・卵巣がん)について

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